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株式会社マネーフォワード デザイン戦略室 PFMグループ リーダー 大橋 瑞生さん

日本の「お金」に対するリテラシーを向上させ、個人や企業の「お金」の課題を解決し、社会を活性化させていくことをビジョンに掲げ、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」をはじめ、ビジネス向けの「MFクラウドシリーズ」など、さまざまなWebサービスを展開しているマネーフォワード。同社のデザイン戦略室でリーダーを務める大橋瑞生さんに、企業におけるデザイナーの価値とは何か、どうすればその価値を最大限に発揮できるのか、お話を伺いました。

 

■ 将来を見失いかけた時に出会った、Webデザイナーという仕事

小さい頃からモノを作ることが好きでした。父がコック、叔父がグラフィックデザイナーと身近な人がクリエイティブな仕事に就いていて、祖母も水墨画を嗜んでいたような家庭環境でしたので、おのずと私もそうした志向になったのかもしれません。特に私がハマったのが、ブロック玩具のLEGO。自分の頭の中で設計図を描き、パーツを自由に組み立てて形にしていくのが本当に面白くて、夢中になって遊んでいました。大人になった今でも好きで、休日には一人で黙々と作品を作っています(笑)。

両親は教育熱心で、常に「勉強しなさい」と言われて私は育ってきました。高校は大学の付属校で、そのままエスカレーター式で大学に進めましたが、特にこれと言って自分が得意だと思えるものもなく、大学で何を学んでいいのかわからず、結局、進学することの意味が見出せずに大学に行くのをやめることを決意したんです。当時は正直、両親への反発もありました。そうしてしばらくは自分の将来についてもやもやと悩んでいたのですが、ある時、Webサイトを眺めていて、このWebサイトそのものがどのように作られているのかを知り、たいへん興味を覚えました。

WebサイトというのはHTMLとCSSで構築されていて、それはまさに私の好きなLEGOを組み立てていく作業と同じではないか。これは面白そうだ!と、Webデザイナーを志すことを決めました。そして、1年半ほど専門のスクールに通ってWebサイト制作について学び、スクールに求人のあった地元のWeb制作会社に就職したんです。最初はアシスタントから入りましたが、すぐにサイトのデザインからコーディングまで一通り任せてもらえるようになり、またPCだけではなくスマホのサイトの制作も経験できました。そのWeb制作会社には2年ほど在籍しましたが、本当にいろいろな知識やスキルが吸収できて、私のデザイナーとしての礎になりました。

 

■ サイトを納品するだけ、サービスを作るだけでは、物足りない

Web制作会社は、サイトを作って納品すれば、それで仕事は終わることがほとんどです。でもWebデザイナーとして経験を積むにつれて、そうしたポジションがもどかしくなってきました。一生懸命サイトを作っても、そこに人が集まらなければ意味がありません。どうすればサイトを活性化できるのか、集客などのマーケティングの手法も身につけたいと、Web制作会社からSEOなどを手がけるWebマーケティング会社に転職しました。

そのWebマーケティング会社でも、SEOのノウハウをはじめ、たくさんのことを吸収することができました。もともと負けず嫌いな性格なので、案件は誰よりも早くSEO対策を施したコーディングをしようとできる限り努力し、そこを評価されて社内でMVPをいただけたこともありました。その後、社内で異動になり、集客のためのアプリなど新たなサービスを開発するチームに所属しましたが、そこでは企画担当やエンジニアなど、違う職種のスタッフと協業しながらモノを作り上げていくことも経験しました。そこで開発した集客サービスでヒット売上に貢献することができ、二度目のMVPも受賞できたんです。

私自身、Webデザイナーになった経緯が少し異端なこともあって、この仕事で食べていくんだという気持ちは人一倍ありましたし、他の人に負けたくない思いが当時のモチベーションになっていました。そうして、社内である程度実績を上げて認められるようになったものの、次第に自分が置かれた環境に疑問を覚えることが増えてきました。その会社は、とにかく次から次へとサービスを作ってはリリースしていく状況で。サービスを改善する意識はそれほど強くなく、そこに少しずつ違和感を覚えるようになりました。せっかく一生懸命考えて作り出したサービスなのだから、世の中に出した後も自分の手で育てていきたい。それがかなう場を求めて私は再び転職を考えるようになり、そして出会ったのがマネーフォワードでした。

 

■ 自ら発信して周囲を巻き込めば、デザインで課題を解決できる

転職先としてマネーフォワードに注目したのは、まずエンジニアが優秀であることです。デザイナーとしてのそれまでの経験から、真に優れたUIやUXというのはエンジニアリングがあって初めて成立すると考えていましたので、ぜひ優秀なエンジニアを抱えている企業でデザインがしたいと思っていました。そして実際に面接に臨むと、この会社が掲げているビジョンにたいへん感銘を受けたんです。代表の辻と当時直接話をしたのですが、「世の中の人々の『お金』に対する不安や悩みを解消することで、この社会をより良く変えていきたい」という熱い想いに触れて、私もとても共感するところがあり、デザインでその力になれるのではないかと入社を決意したのです。

そうした志を抱いてマネーフォワードに参画したわけですが、まだ立ち上げ期だったこともあってリソースが足らず、当初しばらくは社内からのリクエストに応えることが仕事の中心でした。私としては、サービスそのものの企画から関わりたいと考えていたものの、なかなかそれが果たせなかった。そうした気持ちを素直に上司に告げると、「この会社は別に職種にとらわれる必要はなくて、エンジニアだろうがデザイナーだろうが、『これをやりたい』と声を挙げれば誰でもやりたいことが出来る。自分からアクションを起こせばいいんだよ」と。

それで、私も思い切って『こんなデザインにしたい』と社内に訴えたところ、周囲に受け入れられて議論の輪が広がり、私のアイデアがLPの改善などに反映されていきました。また、ユーザー啓蒙のために、興味のあったツールを使ったコンテンツなども自ら企画制作し、好評を博しました。自分の考えを発信し、周囲を巻き込みながら、まさにデザインで課題を解決していく経験を得たことで、私は新しいステップをひとつ上れたように思います。

 

■ 掲げるビジョンを「可視化」し、サービスに落とし込んでいく

そしてマネーフォワードに入社して2年目、「デザイナーの存在意義とは」を強く考えさせられる事態に直面しました。当時、個人の家計や資産を管理するBtoC向け自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」の新規ユーザー獲得のために、TVCMを放映する大々的なプロモーションを実施したのですが、そこで開発チームの方針がぶれてしまったことがありました。新規ユーザーとして主に想定していたのは、このようなサービスの使用経験が無い主夫・主婦層の方々であり、そうしたターゲットにあわせた機能やUIを実装したのですが、従来のユーザーは資産の管理や運用に対して意識の高い方々が中心で、乖離が生じてしまった。当時は、新規のユーザーを増やすKPIを重視して、そのためのデザインを制作しましたが、私自身も「誰に向けてこのサービスを作っているんだろう」とわからなくなってきて、このままではまずいと感じていました。そこで私は、このサービスのコンセプトを明確にし、目指すべきビジョンを可視化して共有しようと考えたのです。そうすれば、誰もが常に同じ方向を向いて開発ができると思いました。「可視化」するのはデザイナーである私の得意分野であり、まずそれをやらなければいいものを作れない、という危機感もあって、チームのメンバーに声をかけたところ、みんな同じような危機感を抱いていたようで議論はとても白熱しました。そして、誰もが共鳴できるコンセプトを定めることができたのです。

その過程で経営層と直に話をする機会も増えたのですが、可視化したコンセプトを提示すると代表の辻をはじめ役員たちは、私たち現場の人間よりもはるかにユーザー視点であることに気づかされました。これまでは、売上やユーザー数というビジネス視点でのKPIばかりにとらわれていたのですが、経営陣はけっしてそれだけを重視してはいなかった。マネーフォワードが実現したいのは、「日本の『お金』に対するリテラシーを向上させ、人々の『お金』に関わる悩みをすべて解決できるプラットフォームを創ること」だとあらためて認識し、そのビジョンをデザインでサービスに落とし込んでいくことが私のミッションなのだと、いまは迷いなく仕事に取り組んでいます。

 

■ デザイナーは、事業にも経営にも影響力を発揮できるポジション

現状、マネーフォワードは企業の成長に社内のリソースが追いついていない部分もあり、デザイナーも不足しているのが実情です。私たちが掲げるビジョンに共感し、社会が抱える課題をデザインの力で解決したいという志をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ仲間になっていただきたいと思っています。まだ草創期にあるため組織もサービスも未完成であり、いま参画すればコアメンバーとして活躍できる。単なるUIやUXのデザインだけにとどまることなく、ビジョンに則ってサービスの価値そのものをデザイン視点で創り出していけるのは、マネーフォワードならではの大きな魅力だと思います。

デザイナーは、ユーザー視点とビジネス視点、その両方を備え、中立的な立場でバランスを取りながらサービスを創っていくことができるポジションだと思います。デザイナーならではの「可視化」という能力を上手に駆使すれば、事業に対しても、経営に対しても、影響力を発揮できる。そのような仕事にやりがいを感じるデザイナーの方が増えると嬉しいですね。私自身も、マネーフォワードが掲げるビジョンの実現に向けて、真っ直ぐ、その役割を担っていきたいと考えています。


 
株式会社マネーフォワード

 
「お金を前へ。人生をもっと前へ」というミッションを掲げ、お金の課題を解決するための事業を展開。自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」や、 会計・確定申告・請求書・給与・マイナンバー・経費精算など バックオフィス業務に特化したビジネス向けの「MFクラウドシリーズ」を開発・提供しています。また、 お金に関するウェブメディア「マネトク」や、国内外でのFintechの現状や最新動向の調査、コンサルティングなど を行うFintech研究所の運営など、網羅的に「お金」に関するサービスを提供しています。

http://corp.moneyforward.com/

大橋 瑞生(おおはし・みずき)

制作会社・Web広告事業会社でのデザイナー経験を経てマネーフォワードに入社。
自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」におけるUXやUI/ビジュアルデザインなどを網羅的に担当。

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