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TV作品からキャリアをスタートし、初監督した映画『幻の光』以来、手掛ける作品が国際的にも高評価を受けている是枝裕和さん。家族を題材にした物語を多く生み出してきた是枝さんが最新作で描くのは、鎌倉の街で暮らす4姉妹の物語。その公開に際し、季節の移ろいや光の変化を丁寧に撮ったという撮影の様子や、クリエイターへのアドバイスなど、お話を伺いました。

 

■ 脚本への興味をきっかけに、制作の現場へ

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大学に入った当時は小説家になろうと思っていたのですが、すぐに大学には行かなくなってしまって(笑)大学近くの映画館に行く機会が増えました。もともとテレビドラマが好きで、映像に興味があったので、当時は様々な映画を観ていましたね。

ドラマの世界では山田太一さんや倉本聰さんらの脚本家が大活躍している時期で、自分の興味も小説から脚本にシフトしていきました。脚本に興味を持ちながら映画を観たり、ドラマを見たり、実際に脚本の勉強ができる学校に通っているうちに、一度、制作の現場に入ってみようと思ってスタートすることになりました。

それからテレビマンユニオンに参加して、様々なTV作品にも携わりますが、脚本は今でも書いていますし、全て今に繋がっていると思っています。

 

■ 鎌倉を舞台に描く、4姉妹の物語

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© 2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

もともと好きで読んでいた吉田秋生さんの「海街diary」の映画化にあたっては、季節の移ろいや光の変化を丁寧に撮りたい、と心に留めていました。

それは、撮影監督の瀧本幹也さんとも話していたことなのですが、幸いにも贅沢に時間を使える環境で、四季それぞれの本物の光の中で撮っていくことができたので、スムーズに撮影を進めることができました。

劇中では、何か大きな事件が起こるわけではありません。父が死んで、鎌倉の家での3姉妹の生活に加わることになった腹違いの妹、すず(広瀬すず)が経験する時間の積み重ねで、彼女が少しずつ変わっていく様子、4姉妹が本当の家族になっていく物語を丁寧に描いています。

四季を通しての撮影となると、大変だったのではないかと聞かれることもありますが、撮影の間に次のシーズンを舞台にした脚本は練り直せますし、時間が空くことで関係が途絶えることはないので、演出家としては時間が空いた方が楽ですね(笑)

 

■ 「食べること」と「生きること」

幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)、すずの4姉妹は、現場でも劇中のように、ずっと喋っているか食べているか遊んでいるか(笑)本当の姉妹のようでした。
そんな4人を見ながら、僕は次のシーンを考えていました。撮影が少し行き詰ったりすると、1人くらい集中するために控室に戻ることもありそうなものですが、それもなく、今回のような映画には、その雰囲気はとても良かったと思います。

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© 2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 
小学館 東宝 ギャガ

4姉妹、それぞれのキャラクターが分かりやすく表現されるものの一つに「食べる」シーンがあります。
食べ方は性格も表現される部分なので、幸は一番きちんとしていて正座して食べる、佳乃は少しだらしなくして…千佳はとにかく美味しそうにたくさん食べるなど、明確なキャラクターの表現をしていきました。

そのように食べるシーンの表現を大切にしたのは、物語全体を通して、法事のシーンが3回出てくることも大きいですね。死に引き寄せられ過ぎないように、彼女たちがきちんと「生きている」描写をするには「食べること」はとても大事だと思ったので、千佳を演じた夏帆さんには「とにかく食べてください」と伝えていました。

さらに、一緒に食卓を囲み、時間を共に過ごすことで、すずが姉妹の一員になったことを感じさせるような描写なども、細かく脚本に書いて、丁寧に演出していきました。

 

■ 耳と目を使って、現場で何かを発見していく

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今回、すずを演じる広瀬さんには台本を渡さずに、口頭で台詞を伝えて演出しました。
僕の作品では、子役はいつもその方法で演出をしています。今回は子役というには年齢が上ですが、オーディションの時に台本を読むセリフと、その場で僕が伝えるセリフと両方に挑戦してもらったところ、両方できたので、「どっちでやる?」と本人に聞いて選んでもらいました。

その方法を採ることによって、相手のセリフをちゃんと耳で聞くようになって、現場で完成させる意識がより強くなると思います。事前に台本を読んで、現場に来てアウトプットできる役者さんも大勢いますが、今回の広瀬さんに関しては、現場に来て初めて3人のお姉ちゃんの口からセリフを聞いて喋る方法が上手くいったと思います。

僕自身、現場で役者さんを観察しながら次のシーンを考えることは多いですし、これから映像制作などに携わりたいという人にも「現場で考える」ことの大切さは伝えたいですね。集団作業なので、観察して、人の話を聞いて…その現場で何かを発見していくという姿勢は重要だと思います。口より、耳と目を使うということは自分でも意識しているところです。


 

■作品情報

『海街diary』
6月13日(土)、全国ロードショー

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(C) 2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

【物語】

鎌倉で暮らす三姉妹、幸、佳乃、千佳の元に、15年前家を出ていった父の訃報が届いた。長い間会ってもいなかった父の葬儀のため山形に向かった三人はそこで異母妹すずと初めて会う。身寄りのなくなった彼女が、葬儀の場でどうしようもない大人たちの中で毅然とふるまう姿に、長女・幸は別れ際とっさに口にする。「すずちゃん…鎌倉に来ない?いっしょに暮らさない?4人で」。そうして鎌倉での4姉妹の生活が始まる…。

原作:吉田秋生(小学館「月刊フラワーズ」連載)
監督・脚本:是枝裕和『そして父になる』

出演:綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すず
加瀬亮 鈴木亮平 池田貴史
坂口健太郎 前田旺志郎 キムラ緑子 樹木希林
リリー・フランキー 風吹ジュン 堤真一 大竹しのぶ

製作:フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

配給:東宝 ギャガ

 

■オフィシャルサイト

http://umimachi.gaga.ne.jp/

(2015年6月12日更新)

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是枝 裕和(これえだ・ひろかず)

1962年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。主なTV作品に、「しかし…」(91/CX/ギャラクシー賞優秀作品賞)、「もう一つの教育~伊那小学校春組の記録~」(91/CX/ATP賞優秀賞)などがある。1995年、初監督した映画『幻の光』がベネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。続く『ワンダフルライフ』(98)は、世界30カ国、全米200館で公開される。2004年の『誰も知らない』では、主演を務めた柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で映画祭史上最年少の最優秀男優賞を受賞。その後、『花よりもなほ』(06)、ブルーリボン賞監督賞を受賞した『歩いても歩いても』(08)、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された『空気人形』(09)を手がける。2011年、『奇跡』がサンセバスチャン国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2012年、初の連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(KTV-CX)で脚本・演出・編集を務める。2013年、福山雅治を主演に迎えた『そして父になる』が大絶賛され、カンヌ国際映画祭審査員賞他、国内外の数々の賞に輝き大ヒットを記録した。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げた。


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