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~飛躍するクリエイター~ 第59回 片桐 咲保 カメラマン

片桐咲保は「絶対にカメラマンとしてやり遂げる」と決めている。
「もともと負けず嫌いなところはあったんですけど、転職して念願だったカメラマンの路線に乗れてからは、仕事に対する意識が明らかに変わりました」
朝から夜中まで連日続く撮影、どうしても出てしまう体力と体格の差……。
「でも自分は望んでここにいるんだと思うと、また初心に戻れて力がわいてくるんです」
現場では人がよく見える。一生懸命向かう姿を見てくれている何かが、必ず導いてくれる。

 

■ 裏方さんがカッコよかった

 中学1年生まで約10年間モダンバレエを習っていました。全国規模のコンクールに出場するくらい、けっこう本気でやっていました。モダンバレエを辞めたあとは陸上部に入り、中・長距離の選手として陸上漬けの毎日を送っていました。実家を出て高校の寮に入り、結局インターハイには出場できませんでしたが、県大会は通過点、あくまでも中部地区大会を目指す!といった心意気で、かなり真剣にやっていました。
 あまり陸上に打ち込み過ぎて勉強がおろそかになり、高校卒業後に大学へ進学するとなると高校の付属大学で陸上をやるぐらいしか道がなくて。それで自分は将来何がやりたいんだろうと改めて考えました。そして、かつて裏方の仕事にすごく憧れていたことを思い出しました。モダンバレエをやっていたときに、舞台で働いている大道具さんや照明さんたち裏方さんを見て、すごくカッコいいなと思っていたんです。それでインターネットや専門学校の情報誌で調べて、舞台の裏方の仕事につくための勉強ができるところということで、日本工学院専門学校を見つけました。友だちはみんな地元志向だったし、知り合いに業界で働いている人なんていなかったから、最初は親にもすごく反対されましたけど、ただただ憧れの気持ちだけで、進路を決めました。
 舞台の裏方を目指して日本工学院専門学校に入学したんですが、入学してすぐに全コースを体験できる機会があって、そのときにリテラシーの座学があって、それで古い映画を見たり、映像の歴史の授業を受けて、映像をつくるほうが楽しいぞと思ってしまったんです。実家にいるときは読書が好きで本ばっかり読んでいましたし、陸上をやっているときは寮だったのでテレビは禁止でした。なので、私はテレビや映画というものをほとんど見てきませんでした。だから自分でも映像の道を選んだことが不思議なんですけど、授業を受けたとき瞬間的に、舞台より映像のほうが影響力があるなと感じてしまったんです。なぜカメラを志望したかというと、これも映像といえばカメラじゃないかっていう自分の思い込みで。それでカメラマンコースに進もうと思いました。

 

■ カメラマンとしてやりたい

 私は学校で学んだからといって、すぐに現場で使えるような知識や技術が身につくとは最初から思っていませんでした。でも学校が業界への入口になるはずだと、学校や講師の先生からの紹介や友だちのツテで、1年生の後半からは本格的にカメラのバイトで現場に入るようになりました。横浜スタジアムのビジョン出しの映像やインターネット中継のカメラマン、大きなライヴのカメラアシスタントなどもよくやりました。
 就職活動はバイトでできた人脈もあったので、そこまで真剣にはやっていませんでした。それでも最初は比較的大規模の会社で経験を積みたいと考え何社か受験し、最後まで残ったひとつが東通でした。東通はバイトでよくお世話になっていたんですが、合格には至りませんでした。ですが、地元の名古屋東通を紹介され、採用が決まりました。
 名古屋東通に2年間勤めて東京に戻りました。カメラ以外の知識もつけたいと自分で希望したことではあったんですが、VEの比重が大きくなってしまい、やっぱり自分はカメラマンとしてやりたいという思いが強く、それが決断した一番の理由でした。2013年から現在所属しているプラス02で、カメラマンとして再出発をしました。いまはやりたい路線に乗れているので、思い切って決めてよかったと思っています。
 現在は、テレビの「情報番組」のロケや「奇跡体験!アンビリバボー」の再現VTR、先輩がTVKの番組を多く手がけているので、そこでビジネスから農協、スポーツまで、さまざまな番組に参加しています。いろんなジャンルに特化した先輩が周りにいるので、先輩方のいいところを少しずつ盗んで、最終的には全部盗みたいと思っています。

 

■ 自分で決めた自分の道

 徐々にカメラを任せてもらえる仕事も出てきて、アシスタントだけやっていた頃とは意識が変わりました。自分でやると考えるようになります。それでまた現場につくと見方が変わる。そこで改めて気づいて、自分でやって、また次の現場で新しいことに気づく。その繰り返しです。できないのは悔しいし、自分の未熟さにイヤになるときもあります。反省はしますが、できないからといって落ち込みません。できないことに気づけた、知らないことを知ることができた喜びのほうが私には大きいんです。
 最近、人が話したいと思う、人が話し出すタイミングも察して撮らないといけないし、どこで編集するかという編集点もわかってないとダメだと気づきました。それには企画をきちんと理解する必要があって、そのためにもディレクターさんと密にやれるような関係性を築くことも大切だと思っています。だから、「ただ撮っているだけじゃなくて、何のためにこの画(え)が必要なのかをわかって撮っている」と言ってもらえたときは本当に嬉しかったですし、そういった先輩からの言葉はとても糧になります。
 企業VTRなどクライアントと密につくる企画ものの作品にも興味がありますが、一番手がけてみたいと思っているのは紀行ものです。先輩でとても紀行ものが得意な人がいて、キヤノンの一眼レフで撮っているんですけど、その技術を盗みたいと思っています。尊敬できる先輩たちに共通しているのは、いまあるもので決して満足してない、よりよくするためにどうすればいいのかを常に考えている人です。そういった人の撮っている映像は番組を見ていても、このカメラマンひと味違うなってわかるんです。同じカメラでも、同じ番組フォーマットでも、カメラマンによって全然違う。カメラマンのこだわりがわかる番組は毎週録画して研究しています。
 センスや感性を磨くのはとても難しいですが、いまは基本的な技術をもっともっと習得して、やがては自分の色を出せるカメラマンになりたい、ならなきゃいけないと思っています。私はカメラマンになるんだと自分で決めてここまできました。そしてここまでやったからには、とことんカメラマンとして突き進もうと決めています。その思いを大事にしていますし、それがいつも自分の核になっています。

profile

片桐 咲保(かたぎり・さほ)

カメラマン


1991年愛知県生まれ。高校卒業後、2009日本工学院専門学校 クリエイターズカレッジ放送・映画科入学。2011年に名古屋東通に入社。2013年からプラス02に所属。主な参加番組は、「奇跡体験!アンビリバボー」(フジテレビ)、「王様のブランチ」(TBS)など多数。

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